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Ry0TAの日記

2010-03-12

サーチナ「中国人口学者の推論「一人っ子政策が同性愛者を増やした」?」の記事について、メモ

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中国人口学者の推論「一人っ子政策同性愛者を増やした」?—サーチナ(2010年3月11日)

http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0311&f=national_0311_045.shtml

  

Yahoo!ニュースでの転載

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100311-00000073-scn-cn

  

驚くようなトンデモ推論なのだが、ここで気になるのは、人口学者・何亚福氏の推論の内容だけではない。

サーチナの記事(編集担当:金田知子氏)の発信のしかただ。

  

漢語メディア中国関連情報を発信するネットメディアについて無知なので限界はあるが、この記事の背景を、少し調べる努力をしてみる。

(ただし、ざっと、取り急ぎの作業だ。あとでできればまとめなおすと思う。)

  

  人民網が運営するBBSサイト「強国社区」ではこのほど、中国で開催中の「両会(全国人民代表大会中国政治協商会議)」に合わせ、さまざまな社会問題を提起する「2010E両会」が設けられ、多くの分野の問題について、意見交換がなされている。

  

  中国の人口問題専門家で、自身も同サイトで論評を掲載する何亜福氏はこのほど、同サイト上の「同性愛者の人権問題」について言及する論評に着目。同性愛者がここ30年で急激に増えているとの現況にも触れ、理由が人口抑制政策「計画生育(一人っ子政策)」にあるのではないか、との持論を展開した。

  

まず記事が説明する前提が、(分かる人には分かるのかも知れないが)よく分からない。

  

最初に出てくる「2010E両会」とは、こちらだ。

http://elianghui.people.com.cn/2010/index.html/

よく分からないのだが(もうダメだ)、会員登録をして、様々な議題を提起して意見を述べ、それについて投票したり、コメントしたりする、ネットフォーラムだ。中国語が分かる人は、自分で確認して下さい。

  

何亚福氏は、「強国社区」にも多くの論評を掲載しているが(http://bbs.people.com.cn/quickSearch.do?threadtype=1&field=userNick&op=in&content=何亚福&mysrc.x=30&mysrc.y=8&mysrc=搜索)、この「2010E両会」にも人口問題に関する議題をいくつか提起している。

http://elianghui.people.com.cn/forumSearch.do?title=&tt=&user=何亚福&ut=0&filesize=&ft=&keywords=&threadtype=1&select=0&select2=0&textfield=何亚福&stime=&etime=&x=40&y=11

  

この「2010E両会」に、青少年網絡聨合盟により、2月18日付で「关于人权问题-中国同性恋问题(人権問題に関して—中国同性愛問題)」という提案が掲載された。

  

E提案第3761号 已立案:关于人权问题-中国同性恋问题

http://elianghui.people.com.cn/proposalPostDetail.do?id=38466&boardId=2&view=1

  

これに目をとめた何亚福氏は、自分のブログで件の「一人っ子政策で云々」という持論を展開した。

  

计划生育导致同性恋增多—何亚福凤凰博客

http://blog.ifeng.com/article/4502068.html

  

(サーチナの記事ではここが曖昧だが、何亚福氏がトンデモ推論(もちろんこれは、僕の考えだが)を発表したのは、「強国社区」でも「2010E両会」上でもなく、自ブログだ。)

  

  

このブログ記事を、もう少し詳しく見てみたい。

中国語ができないので、エキサイト翻訳に働いて貰う。

  

以下は、段落ごとに機械翻訳にかけ、イミフな翻訳から意味を類推して要約したものだ。翻訳でも本当の意味での要約でもない。読む人は、決定的な誤りをしているかもしれないということを前提に読んで欲しい。

  

私は同性愛の問題について決して深く研究したこともないし、前はこの問題に関心を持ったことがなかった。が、最近「E両会」で人口問題関連の提案を提出したこともあって、「E両会」上の各種の提案を閲覧した。「E両会」で最も人気がある提案は何か?私は皆が関心を持つのは腐敗反対や遺伝子組み替え、住宅問題などだと思っていた。しかし予想外なことに、最も人気がある提案の1つは意外にも同性愛人権問題に関してだ。この提案は2月18日に提出され、3月10日までにクリック数が100万を上回り、支持の拍手は18万以上、署名数は23000人を上回る。むろん、この提案は「代刷流量」のようなものかもしれないが(ここよく分からない)。

  

1つのE提案だけで、同性愛がこのような大勢の支持を得ていると結論づけることはできない。だが今の中国同性愛者は30年前にに比べ非常に増加していることは否認できない事実あり、「同志」という言葉はある人々の間では同性愛傾向を持つ人のことだと理解されている。では、同性愛の増える原因は何か?前にも言ったように、私は同性愛問題についてあまり研究したことがなく、権威のある解答を出すことはできない。だが私個人の推測では、同性愛の増加には多くの原因があり、その1つは中国が1980年からの“1人っ子化”に基づく計画生育を全面的に推進したことだ。計画生育でどうして同性愛が増えるのかというと、2つの原因がある。・・・

  

続く内容は、サーチナの記事に詳しいだろう。

自身の推論を述べたのち、氏はこう結論づける。

  

計画生育は同性愛の増加を招き、同性愛の増加はまた出産率の下降を招く。同性愛者が子供を生むことがあり得ないからだ。同性愛の増加と普遍的な出産願望の低下は次のことを示唆する:中国が将来出産率を上昇させたいとしても、これはとても困難だということだ。中国は1991年以来出産率は低下を続け、すでに約20年になろうとしている。現在中国の出産率は非常に低いレベルにある。中国の人口の持続可能な発展のためには今中国が出産を激励しなければならない、と私は思う。

  

要するに、あまり同性愛について考えたことのない人が、ネットフォーラムで「同性愛者の人権」に賛同する人が多いのを見かけて、「同性愛者、多い!」とシンプルに驚き、ご自分の専門に牽強付会して「なぜ同性愛者はこんなに増えたのか」とブログで自説を上げてみた、というものだ。

  

このトンデモ説(僕のry)がどこかの中国語ニュースサイトで公表され、サーチナの記事はそれを翻訳編集したもの、という形跡は、今のところ僕には見つけられていない。サーチナの記事はこのブログにリンクを貼っているし、サーチナのソースもこのブログじゃないかと思う。もしかしたら、別に記事があるのかもしれないけれど、今のところ僕にそういう記事は見つけられていない。

  

はっきり言って、公のニュースになっていないとしたら、この人の名誉のためには良かったと思う。だって、バカ丸出しだもの。

  

まず発想のシンプルっぷりだ。同性愛者の人権に賛同を示す異性愛者も、いくらでもいる。ネットでは特にその意見を表明しやすいだろう。「同性愛者の人権に賛同=同性愛者=多い=同性愛者が多い!」って、バカもいいとこだ。

同性愛者が増加」って、これまで差別や抑圧の下で声を出せなかっただけだという想像力も働かないのだろうか。

そして推論の内容も,メチャクチャだ。

男が多い性比率の偏りが同性愛者増加の原因って、「同性愛者」は、男性同性愛者のことだとしか考えていない。ヘテロセクシストのおっさんがよくやる初歩的な間違いだ。

「男らしくない」「女らしくない」と同性愛者になる、というのも、みごとにヘテロセクシストのおっさん感覚である。

同性愛者が増えると出生率が下がる」というのも、クラシカルな偏見にもほどがある。90数パーセントの異性愛者の間の出産率の低下を引き起こす問題を放っといて、数パーセントの同性愛者の存在にやきもきしているなんて、この人本当に人口学者?と思う。

  

要するに、あまり同性愛に関心のない、むしろ偏見を持っている人が、ネットフォーラムで「同性愛者の人権」というテーマが好意的な支持を集めていることを意外に思い、「同性愛者が増えたんだねえ、でも、同性愛者が増えると人口が減って困るんじゃないの?」とブログに書きました、という話だと思うのだ。

  

僕も自分がよく知らないことにはバカな放言をする。ブログをやっていると、ネットという公の場でもよくやってしまう。ある分野の専門家も、自分がよく知らないことには変なことも言うだろうし、偏見も垂れ流すだろう。

日本のブログ界でもよくあることだ。

  

むしろ、サーチナがこれをもっともらしい記事に仕立てて発信していることが、僕は非常に不愉快だし、問題だと思う。

  

サーチナの記事は、これがよほど凝った皮肉でないとすれば、このトンデモ推論をそのまま受け入れていると言っていい。何氏は「権威ある回答は出せないが」と断っているが、この記事が権威を与えてしまっている。

  

最後の箇所、

  中国政府のこれまでの推計では、中国における男性同性愛者は約100万―500万人とされている。しかし、同性愛者の権利問題などに詳しい、李銀河氏や張北川氏らをはじめとする専門家は、その数は約3000万人に達し、今後増える可能性もあると指摘している。(編集担当:金田知子)

  

このソースは不明だが、中国同性愛者人口の試算に関するニュースはこれまでにも何度か出ている。

銀河氏による「300万人」という発言は、レコードチャイナの記事になっていた。

  

同性愛者は3000万人!意外と寛容な社会、同性結婚も合法化か?—中国レコードチャイナ

http://www.recordchina.co.jp/group/g12843.html

  

銀河氏は同性愛者やセックスワーカーの権利擁護を訴える有名な学者・アクティヴィストだ。これは僕の推測だが、中国同性愛者が置かれたクローゼット状態についてもよく知っているはずの方であり、「今後も増える」なんて言い方はしそうにない。

だが、サーチナの記事では、こうしたソースが、「一人っ子政策による憂慮すべき同性愛者の増加」という推論の裏付けを誘導するような道具に使われてしまっている。

  

この記事を日本語で読む人は、どんな印象を抱くのだろう。

その通りだ、と真に受ける人もいるだろうか。

中国ではこんな旧弊なことが言われるよね」と、(中国への偏見から)考える人も、いるかもしれない。

けれど、実際に起きていることは違う。

最近も大きなバックラッシュがあり、多くの困難を抱えているけれど、少しずつ同性愛者の生きる社会を開こうとする努力をしている人たちがいる。それがネットのフォーラムにも表れている。状況は、そういうことだ。

それを、人口学者の勘違い気味のブログ記事を引っ張ってきて、「同性愛者が増加し、人口減少が懸念される」という説を作り上げているのは、なによりサーチナのこの日本語記事の書き手だろう。

  

これは中国の問題というより、日本語のメディアの問題だと思う。

(サーチナ中国企業だが、日本語の記事は日本人スタッフの手により日本の読者を想定して編集されているのだろう。)

  

サーチナの記事で,僕が腹立たしいと思ったことは、もうひとつある。

  

「2010E両会」の青少年網絡聨合盟による「同性愛者の人権」の論説は、上海サーチナ(新秦調査)にも3月12日付で転載されている。

  

关于人权问题-中国同性恋问题— 新闻调查—新秦調査

http://www.searchina.net.cn/survey/detail.asp?id=2459

  

「感谢会员searchina提供此次新闻内容(サーチナ会員が今回この記事を提供してくれたことに感謝します?)」という一文を冒頭に添えての転載だ。1994年にようやく非犯罪化された同性愛中国で置かれた状況を訴える論説のあと、「あなたの周りに同性愛者の友人はいますか?(你身边有同性恋的朋友吗?)」というウェブアンケートがついている。

  

日本語サーチナの記事の関連記事の

あなたの周りに同性愛者の友人はいますか?-中国人調査

http://www.searchina.net.cn/survey/result_jp.asp?id=2459

  

というところから飛べる。

けれど、この日本語版の方では、青少年網絡聨合盟の論説は全部省略されているし、あまつさえ、タイトルは「中国人口学者、一人っ子政策同性愛者を増やした?」になっている(中国語の方は、ちゃんと「关于人权问题-中国同性恋问题」だ)。

日本語だけ読む人には、「あなたの周りに同性愛者の友人はいますか?」というアンケートが、人権問題に関連しているとは思わないだろう。「どれほど同性愛者が増えているのか?」の調査のようだ。

  

人権問題が語られているということを、どこまでも無視したいのだろう。

  

3月13日追記

昨夜勢いでまとめたメモだが、いろいろと問題がある気がする。

僕は、サーチナの記事について、

同性愛についてあまり考えたことのない,偏見を持つ学者の勘違い的なブログ記事を、サーチナがもっともらしい説のように取り上げている」

ということを強調した。

  

けれど、現在の中国で起きているという性比率の不均衡が、同性愛者の存在が社会の脅威であるようなまことしやかな言説に利用される、同性愛者に対する偏見や抑圧を正当化に結びつけられるというのは、ありうること、現に起きていることだというのは事実だ。

中国語メディアを読む力はないが、1月11日、ロシアの保守的タブロイド紙が、中国同性愛解放を人口問題に結びつけて危険視(というか、揶揄?)するような記事を発表していたことを、遅ればせながらGEIRO.orgで知った。

  

中国同性愛者がおかれている状況、そしてロシアゲイ殺人事件—GEIRO.org

http://geiro.org/2010/01/17/chinaandrussia/

  

何氏のブログエントリやそれを取り上げたサーチナの記事は、中国での同性愛者に対するバックラッシュ正当化に、人口問題不安が駆り出されてゆく(「同性愛者が増えると人口が」というのは本当に古くさい偏見なのだが、新規にドレスアップして、もっともらしく肯定される)という潮流の表れかもしれないのであり、僕の見方は、それをあまりに矮小化しているかもしれない。

  

けれど、サーチナの記事は、そうした流れを捉えるのではなく、むしろ「作ろうとしている」性質のものだという点で問題なのは確か。

  

あと、日本語による日本語・日本社会での語られかた、読まれかたの問題。

何氏のように、同性愛について考えたことはない、と言いながらいい加減な意見を自ブログで述べる人は、日本でも珍しくない。

同性愛者が増えた」「でも同性愛者が増えると生殖が」とか、特に考えるでもなく発言する人に遭遇する例は、枚挙にいとまがない。

それをニュースに取り上げ、かの国で「専門家」に裏付けられた仮説のように発信するメディアの問題、それが一つ。

そしてそれが日本社会で、「また中国でおかしなことを言っている」というようなかたちで受け止められること。

Yahooニュースには、いつものことだが、いくつものチャイナフォビックなコメントがついている。

そのうちの一部は、このトンデモ推論に対する呆れの表明だ。

そこには、伝統的・保守的な中国では、こんな奇妙な説が出るのも不思議はない、とでもいうようなニュアンスが伴う。

しかし、個人ブログの自説に過ぎなかったこのトンデモ推論を、中国で行われている同性愛者権利運動のコンテキストをわざわざ省略して、発信しているのは日本語メディアだ。

日本語社会・日本社会の偏見やホモフォビアの発露なのに、その責任は“当然ホモフォビックな国であろう”中国に負わされる仕組みになっている。

僕が最も気持ち悪く思われるのは、この点だ。

それをうまく説明できるとよいのだけれど。