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Ry0TAの日記

2010-03-10

フロスト警部「狙われた天使」のレズビアン・カップル

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英国ミステリドラマ『フロスト警部』「狙われた天使(原題House Calls)」(1997)で、レズビアン・カップルが登場していた。

  

A Touch of Frost - en.Wikipedia

http://en.wikipedia.org/wiki/A_Touch_of_Frost_(TV_series)

  

ここで有料視聴できる。

http://www.showtime.jp/app/detail/contents/g00cnm120000131710758/

  

どのように登場するのか説明してしまうとネタバレになるので詳細は書かないが、物語のテーマは、「犯罪者への人間としての共感」であったと思う。

罪を犯した人間も、苦しんだゆえの、やむにやまれぬ行動だったかも知れないーなんて書いてしまうと、そんなドラマはいくらでもありそうだし、なんだかつまらない話のような気がしてくる。が、罪を犯した人間を、「犯罪者」として端から疑いの目で見るのではなく、一人の人間として見、その人間が味わった苦しみに同情もする。児童虐待で服役し刑務所で虐待された引きこもりの男シドニーに同情したことで、児童殺人事件を引き起こしたと追いつめられ苦しむが、自分の直感を信じて捜査を続けるフロストの姿を通し、その「つまらない」ことの難しさと重さを描いていた、そういうストーリーであったように思う。

  

それぞれの人物たちが、それぞれのやむにやまれぬ事情で望まない犯罪に巻き込まれてゆくなかで、レズビアン・カップルが殺人事件に巻き込まれる事情は、「クロゼット」である。

  

田舎の村で、

「ただ何も言われずに、静かに暮らしたかっただけ」

その望みは、だがほぼ必然的に、レズビアンであり恋人同士であることを隠すクロゼットにつながる。

そしてその状態を守ろうとすると、レズビアンであることにつけ込まれ危険にさらされても、正当防衛を主張できない。それを言えば、恋人同士だということも、明らかにしなければならないから。

性的少数者が遭遇する犯罪では、同性愛者やトランスジェンダーホモフォーブ(同性愛嫌悪者)やトランス嫌悪者に暴力を振るわれる、殺されるなどの悲惨な、そのぶん可視化しやすい憎悪犯罪事件が注目されるし、そういうものとして想像される。

だが、そうした大きな犯罪の背後には、小さな窃盗、詐欺、恐喝、いやがらせなど、届け出ることができず、泣き寝入りする犯罪が数知れずある、という論説を、以前読んだことがあった。被害を被っても、それを届け出るために性的少数者だと明かさねばならない、あるいは明らかになる恐れがあるなら、往々にして人は黙っていることを選んでしまう。事件そのものが、その人が性的少数者であることと関わりなくても、そうなってしまうのだ。届け出るとき、なにかプライバシーが関わるようなことを説明せねばならなくなれば、「ばれる」可能性は常につきまとう。事件が公になり、それが周囲にも知られるかも知れないと思うと、黙って被害を受け入れるほうを選択する人は、恐らく少なくないだろうと思う。

性的少数者に限らない。民族的マイノリティ、受刑者、通院などを知られては困る人・・・身や生活を守るために、泣き寝入りを選ばされる人たちが、それぞれの社会が持つ構造によって存在する。少数者が遭遇する犯罪被害のありようは、「明瞭な憎悪犯罪」だけではなく、このような構造まで考えに入れなければ、分からないのではないか。

  

フロスト警部』のエピソードが良かったのは、レズビアン・カップルを共感的に描いていただけではなく、「隠さねばならない」状態が招くこのような犯罪被害のありようを、切実なこととして捉えていたからだと思う。それがこのストーリーを、美しくけなげなレズビアン・カップルを「かわいそう」と(上から目線で)描く鼻持ちならない話に墜ちるところから救っている。

フロスト警部は時々かなり鬱陶しいマッチョオヤジ警部なのだが、彼が女性同性愛についてうざいリアクションを見せなかったのも良かった。

(かつての彼の頼もしい仲間、モーリーン・ローソン巡査部長がレズビアンだから、当然だが。)